本研究では, 筋疲労に伴う主動筋および拮抗筋脊髄運動ニューロン興奮性の変化を明らかにするため, 等尺性足関節底・背屈運動前後のヒラメ筋H波およびM波の経時的な変化を観察した。対象は健康な男子10名とし, 最大随意筋収縮(MVC)の50%の足関節等尺性運動を行った。その結果, (1)底屈運動によるヒラメ筋の疲労後, Hmax/Mmax(最大H波とM波の振幅比)は, 安静時と比較して57.37±12.97%に低下し, この低下は運動終了30分後においても74.90±10.89%であった。このことから, 筋疲労に伴い, 筋を支配する脊髄運動ニューロンが長時間抑制されることが示唆された。(2)背屈運動による前脛骨筋の疲労後, 拮抗筋であるヒラメ筋のHmax/Mmaxが, 安静時と比較して70.13±8.85%に低下した。運動終了後, 徐々に回復し, 8分程で安静時のレベルに回復した。(3)前脛骨筋の疲労後, 拮抗筋であるヒラメ筋のHthr(H波閾値)は安静時と比較して有意に増加した。(2)と(3)により, 主動筋の疲労によって, 主動筋のみならず運動を行っていない拮抗筋脊髄運動ニューロンも抑制を受けていることが明らかになった。