胃癌において臨床病理学的因子及び分子生物学的因子を用い, 予後予測因子, 特に腹膜及び肝再発予測因子について多変量解析により検討した。当科で切除された原発胃癌切除症例165例について分子生物学的因子として, c-erb-B2,c-met, K-sam, proliferating cell nuclear antigen(PCNA), Platelet-derived endothelial cell growth factor(PDECGF), Vascular endothelial growth factor(VEGF), E-カドヘリン, β-カテニン, Matrix metalloproteinase 2(MMP-2), Matrix metalloproteinase 9(MMP-9)の発現について免疫組織学的染色を施行した。これらの因子の中で単変量解析によりc-met, K-sam, PCNA, PDECGFが予後予測因子となり得ることが認められた。さらにロジステックモデルによる多変量解析により, 腹膜再発に関してはリンパ節転移, 間質型, K-samおよびc-metの両者陽性群, 肝再発に関しては, 深達度, MMP-9が有意な独立した再発予測因子であった。Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析による予後予測因子の検討ではリンパ節転移, 深達度, 間質, K-sam及びc-met両者陽性群が独立した因子であった。従って, 本研究により胃癌の予後予測因子に関して, 臨床病理学的因子に分子生物学的因子を加えて検討することがより有用であることが示された。