本研究の目的は, ラットを用いて新鮮同種神経の中間に自家神経を介在させた場合に, 神経再生にどのような効果を及ぼすかを検討することである。Lewisラットの坐骨神経に作製した欠損部に, DAラットから採取した神経片を移植した。この同種移植神経片の中間にレシピエントの小自家神経片を介在させて移植したものを介在群, 自家神経の代わりに同種神経を介在させたものを対照群とした。免疫抑制剤としてシクロスポリンを手術前日から術後12週間, 毎日皮下投与した。両群とも移植後12,13,14,15,16,24週目に安楽死させ, 前脛骨筋湿重量の測定と, 移植神経の組織学的, 免疫組織化学的検査をして, 以下の結果を得た。すなわち介在群, 対照群とも免疫抑制剤中止後4週目に前脛骨筋湿重量, 総有髄線維数, 有髄軸索径が最も減少していたが, 両群間で比較すると, 介在群の方が対照群に比べて有意に多かった。また, 介在群では, 免疫抑制剤中止後4週目に移植神経内のOX抗体に対する染色性が対照群に比べて有意に高く, レシピエント神経片のシュワン細胞によって有髄化された同種神経の再生線維が多いことを確認した。すなわち, レシピエントの神経断端からばかりでなく, 移植神経片の中央に移植された自家神経片からもシュワン細胞が移動していることが推察された。