しびれは患者には苦痛で不安な症状であり, 医療者側にとっても病気の診断と経過観察の上で見過ごすことができないものである。しかし, しびれに関しては神経医療分野以外で研究対象に取り上げられることは少なく, 患者がしびれを訴えた場合にも, それに対処する医療者の姿勢はともすれば消極的になりがちである。その理由の一つは, しびれが他者にとっては把握しにくい自覚症状であるからである。本研究では, 糖尿病患者726名で, しびれの客観的把握と看護支援の検討を試みた。アンケートは第1段階でしびれの有無ごとの分類, 第2段階でしびれ無群(I群), 現在しびれ有群(II群), 過去にしびれ有群(III群)の3種類に区分した.有群281人(II, III群)のうち, しびれと, それに伴った自律神経障害, およびそれらによる不快感や日常生活支障を感じた者は194人で, 有群の69.0%, 対象者全体の26.9%を占めた。しびれの強度と日常生活支障項目(25項目)数は有意に相関しており, 精神的支障は約4割, 身体的支障は約6割であった。支障項目のうち, 手指を使用する項目と上肢のしびれ感との関連が有意であり, 特に利き手の可能性が高い右上肢にその傾向が顕著であった。25項目中, 頻度の高い上位14項目で精神的支障項目, 全身・下肢支障項目, 上肢支障項目に分類し, 全身・下肢支障項目+上肢支障項目を身体的支障項目とすると, しびれの強度が強いほど精神的支障が占める割合は増加し, 身体的支障が占める割合は減少し, 身体的支障は精神的支障に影響を与え, 精神的支障の背景には強度のしびれとそれに伴う身体的支障が存在している可能性が高かった。看護者は, 身体的支障への支援だけでなく, しびれという「体験」を認識・理解し, 個々人にあった精神的支援を行うことが重要だといえる。