舟状骨骨折は症状が軽度のため, 発見されたときには陳旧例となり, 骨吸収によって正常の形態が崩れていることも少なくない。手術時の整復操作は, 術者の経験に基づいた勘に頼らざるを得ないのが現状である。3D CTからの実物大モデルを再構築することができれば, より正確な治療に結びつくと考えた著者は, 舟状骨の形態計測を行うとともに, 3D CT画像データからの再構築を試みた。本論文は, その基礎データを解析したものである。対象は, 系統解剖用遺体40体(男性23体, 女性17体)の内, 左右対の摘出が11体(男性9体, 女性2体)に可能であったが, 残りの29体は片側のみの摘出となったため, 51手(男性32手, 女性19手), 右27手, 左24手であった。測定には接触型3次元スキャナーを使用した。男女間では, 長軸長に有意差を認め, フーリエ係数には認めなかった。左右では, 長軸長, フーリエ係数ともに有意差を認めなかった。Compsonらの形態分類に従い3型に分類可能であったが, その3型間のフーリエ係数には有意差を認めた。また, 全体, 男女別, 型別に, 各々の中央値を用いて再生曲線を作成した。この曲線を立体モデル化すれば, 舟状骨骨折の手術時に本来の掌側面をどの様に再建すべきかの目安として, 臨床応用が可能と思われた。10手に関しては, 3次元スキャナー計測群, 舟状骨単体の3D CTからの計測群と手関節3D CTから切り出した舟状骨の計測群の長軸長とフーリエ係数の比較検討をおこなった。計測システムの拡大率を補正できれば, 3D CTから作成されるモデルは実際の測定結果に近づくことがわかった。今回の画像処理システムでは, 手関節3D CTから舟状骨のモデルを作成することに関して誤差が大きかった。現状では, 健側手関節3D CT画像の鏡面像から舟状骨を含むモデルを作製し, ある程度の拡大を考慮して臨床応用すべきだと考えた。