中心静脈内にカテーテル(以下CVCとする)を挿入して行う輸液管理は重症患者への医療には欠くことの出来ないものとなっている一方, カテーテル留置に伴う血流感染の危険性は高い。大学病院におけるCVC由来血流感染症の実態を明らかにするため, 1996年1月から1998年12月までの3年間に広島大学医学部附属病院での各診療科別にみた微生物検査室へのCVCおよび血液の培養依頼状況およびその結果を明らかにした。本調査ではCVCおよび血液の培養の原因菌が一致し, それらの症例について, 薬剤感受性やカルテの内容からCVC挿入が血流感染の直接的な原因になっていたか否かを検討することによりCVC由来菌血症と定義した。血液およびCVCの検査依頼総数は2,233件, 菌検出検体は283件, 検出率は12.7%であった。3年間に検出された菌種の過半数は, 血液およびCVC共にグラム陽性球菌であった。診療科により検出される菌の種類, またその数の違いが見られており, 外科系においてはグラム陽性菌の検出数が多く, 内科系ではグラム陰性菌の検出数が多い傾向が見られたが, 統計的な有意差は認められなかった。血液とCVCから同種の菌検出が認められた症例は13件であり, 1996年に6件, 1997年に5件, 1998年に2件であった。これらの症例を検討した結果, 明らかにCVC由来感染と考えられたものは各年毎2例であり, 原因菌以外の操作中の汚染として見過ごされがちなCoagulase negative-staphylococciが多く見られた。これらのことから, CVC由来血流感染を防止し, 患者の生命予後を改善していくため, CVCを用いた輸液管理に関する正しい理解と正確な技術に基づいたルート管理の必要性が考えられた。