糖尿病患者では健常者に比して血清マグネシウム濃度(serum magnesium以下SMg)が低値を示す, あるいはコントロール不良の症例, 合併症を伴う症例ではSMgが低値であるといった報告がみられる。そこで, 日系米人を対象として医学調査(n=375)・栄養調査(n=147)を行った。医学調査では, 既知の糖尿病を除いた全例に75gブドウ糖経口負荷試験(oral glucose tolerance test以下OGTT)を行い, それらの成績について以下のように検討を行った。すなわち, 1)耐糖能別SMgの平均値の有意差検定, 2)SMgとSMg以外の医学調査成績との相関の有無, 3)耐糖能別マグネシウム摂取量(以下Mg摂取量)の平均値の有意差検定, 4)SMgとMg摂取量・カルシウム摂取量(以下Ca摂取量)の比(以下Mg/Ca比)との相関の有無, 5)SMgとCa摂取量・たんぱく質摂取量の比(以下Ca/たんぱく質比)との相関の有無について検討を行った。1)耐糖能別SMgの平均値±標準偏差(以下M±SD)は耐糖能正常群(normal glucose tolerance以下NGT)2.13±0.18mg/dl, 耐糖能異常群(impaired glucose tolerance以下IGT)2.14±0.18mg/dl, 糖尿病群(diabetes mellitus以下DM)2.08±0.20mg/dlであり, NGT・DM間およびIGT・DM間に有意の差がみられた(いずれもp<0.05)。2)SMgと空腹時血糖値(fasting serum glucose以下FSG, r=-0.216,p<0.0001), インスリン抵抗性指数(homeostasis model assessment以下HOMA, r=-0.104,p<0.05)および血糖値の総和(以下ΣSG, r=-0.136,p<0.01)に負の相関がみられた。3)耐糖能別Mg摂取量はNGT344±170mg, IGT377±229mg, DM314±113mgであり, いずれの群間においても有意差はみられなかったが, DMにおいてMg摂取量が低い傾向がみられた。4)SMgとMg/Ca比および5)SMgとMg/たんぱく質比のいずれにおいても有意の相関はみられなかった。以上のことから, SMgはFSG・インスリン抵抗性と関連があり, 特にDMは軽症例が多いにもかかわらず他の2群に比してSMgが低値であった。このことがさらに耐糖能を悪化させる可能性もあり, 糖尿病症例に対してMgの補給を考慮する必要もあると考えられた。