冠動脈粥腫切除術(Directional coronary atherectomy, DCA)により採取された組織を用い, 労作性狭心症患者の冠動脈の狭窄度とプラークにおける組織形態および細胞増殖能との関連を病理組織学的に比較検討した。対象は, DCAを施行した労作性狭心症患者連続74例74病変のうち, 冠動脈形成術歴のない労作性狭心症患者28例28病変(新規病変群)と冠動脈形成術後労作性狭心症患者46例46病変(冠動脈形成術後群)である。臨床病態により安定狭心症(SAP群)と不安定狭心症(UAP群)に分類しそれぞれ検討した。新規病変群のプラーク形態における検討では, 内膜過形成, 血管新生, 出血, 炎症細胞浸潤等のプラーク変化の頻度はSAP群に比しUAP群に高く, またPCNA陽性細胞はUAP群に高率に認められた。冠動脈形成術後群における検討では, プラーク形態, プラーク増殖能のいずれも両群間に差は認められなかった。また冠動脈造影上の狭窄度によりH群(狭窄度≧70%), L群(<70%)に分類しそれぞれ検討した。新規病変群における冠動脈狭窄度とプラーク形態およびプラーク増殖能との検討では, 両群間に差は認められなかった。また, 冠動脈形成術後群における検討でも両群間に差は認められなかった。以上より, 冠動脈造影上の狭窄度からはプラークの不安定化は予測不可能であった。また冠動脈造影上の狭窄度は高度でない場合においても病理組織学的に血管新生, 出血, 炎症細胞浸潤等の組織形態を伴う不安定なプラークが存在する可能性が明らかにされた。