粥状動脈硬化の発生過程において, その主要な細胞構成成分として平滑筋細胞, マクロファージが, 細胞外構成成分としてコラーゲンがあげられる。本研究では, WHHLウサギを用い冠動脈と大動脈の病変について, これらの構成成分を中心に進展度別にその細胞数や沈着量の比較検討を行った。初期病変においては, 冠動脈では平滑筋細胞の増殖が優位であり, 大動脈ではマクロファージの増殖が優位であった。また, 初期では, アポトーシスはほとんど認められなかったが, 進行期でアポトーシスの関与している可能性があった。コラーゲンは初期病変では, I型, III型, IV型を内膜全体に認めた。進行するにつれV型を全層にVI型を深層に認めた。コラーゲンの分布に冠動脈と大動脈では各段階で明らかな差は認めなかった。このことから粥状動脈硬化性病変の発生過程において冠動脈と大動脈では平滑筋細胞とマクロファージの役割に違いがあることが示唆された。すなわち初期に冠動脈では平滑筋細胞の増殖が優位であり, 大動脈ではマクロファージの増殖が優位であったが, 病変の進行と共に両者は似た像を呈したことから, 冠動脈と大動脈では初期に平滑筋細胞とマクロファージの役割に違いがあることが重要な点であると考えられた。