本研究の目的は, スプリント製作中に製作者が用いる上肢動作の特徴, 特に, 初心者の「適合不良に繋がる誤り動作」を明らかにし, 効果的な教授・学習方法の資料を得ることにある. 対象は, スプリント製作に熟練した作業療法士(熟練者)4名とスプリント製作が未経験である作業療法学生(初心者)4名とした. 方法は, スプリントを被製作者の手に形作る場面をビデオ録画し, 製作者が用いた上肢動作を可能な限り具体的に文章記録に転記し, 内容の類似性に従って帰納的に分類した. 次いで, 熟練者と初心者の動作を比較し, 初心者のみに見られる「誤り動作」の特徴を検討した. その結果, ① 被製作者の手の形を考慮せずにスプリントをそわせる, ② スプリントや被製作者の手の柔らかさを考慮せずに圧力を加える, などを得た. これら「誤り動作」は, 初心者教育に有用な文字情報および画像情報として使用可能であると考える.