本研究は,先駆的な公衆衛生看護活動を展開した一人の保健師の仕事生活に関連する人生体験に焦点を当て,キャリア発達を記述し,その特質を明らかにすることを目的とした.研究協力者は瀬戸内海の離島の町で先駆的な精神保健福祉活動を実践した50代の保健師である.データ収集のために数回の非構成面接を行い,面接内容を録音して逐語化した.逐語録からキャリア発達が表現されている箇所を取り出してストーリーを構成し,アウトラインを記述し,キャリア発達の特質を質的帰納的に分析した.その結果,キャリア発達の特質として,「働く女性としての道を切りひらくこと」「保健師として目指す方向をもち続けること」「活動を振り返りながら実践能力を高めること」「サポートネットワークを作り出すこと」「キャリア発達の基盤となる資質をもっていること」の5 つが見い出された.