新しい固有感覚測定装置使用のための基礎データを得る目的で膝関節の運動方向の違いが位置覚測定の結果に与える影響を調べた.対象は,膝関節疾患および外傷の既往がない大学生8名とした.位置覚測定は設定角度を膝屈曲15°として,設定角度まで膝屈曲30°から伸展させるタスクと,膝完全伸展位から屈曲させるタスクを行った.2つのタスク間で再現角度,定数誤差値および絶対誤差値の平均値に差があるかを確かめたが,いずれも有意差を認めなかった.その結果,運動方向の違いは,位置覚測定では測定結果に影響を与えないことが示唆された.これは,位置覚測定において運動方向を任意に選択しても結果に影響しないことを示している.膝関節構成体は運動方向の違い,即ち屈曲と伸展で異なった刺激を受けていると考えられるが測定結果に有意差を認めなかったことからメカノレセプターの機能を再考する必要があると考えた.今後はACL 損傷者と健常者とを比較することにより,位置覚測定で運動方向の違いがACL 中のメカノレセプターに与える影響を明らかにすることができると考える.