アセテート-1-14Cからのスクワレンおよびコレステロールの生合成に関し,コイの肝膵臓,ニジマス肝臓およびマウス肝臓のホモジネート上澄液を用いて研究した.補酵素ATP,NAD,NADPおよびNADPHを添加し,30℃で好気的・嫌気的条件下に培養を行なった.
アセテートの総脂質中へのとり込みは,ニジマス標品を用いた場合は非常に活潑で,コイ標品でもかなりな程度行なわれたが,マウス標品では著しく低い結果を得た.コイおよびニジマスで代表される魚類標品での脂肪酸合成はステロール合成を凌駕していたが,マウス標品では逆にコレステロール合成が優れていた.
一般的に魚類におけるコレステロール合成に関する補酵素要求性は陸上動物のそれとあまり相違してはいない.
スクワレンからコレステロールへの閉環に関し要求される補助因子の一つとして,好気的条件下の合成にみられたように,分子状酸素が重要に作用する.さらに,深海産のサメ肝油中にみられる異常な程の大量なスクワレンとそれ程でもないコレステロールの含量に関して考察を加えた.