オオサンショウウオAndrias japonicus は,日本の固有種であり国の特別天然記念物である。環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定され,全国的に生息状況の悪化が危惧されている。東広島市豊栄町椋梨川においても,河川の人工化等によりその数が減少し,保護活動の担い手の高齢化に伴い,本種の生息状況に関する情報が極めて乏しい状況であった。そこで,本河川での本種の分布・生態を明らかにする野外調査を実施した。その結果,2011 年からの約2年間の調査で成体21個体と幼生10個体を確認し,本河川が本種の生息地であるだけでなく貴重な繁殖地であることを確認した。しかし,幼生を除けば全長60 - 86cm の大型個体しか確認されず,弱齢個体の個体群への新規加入が正常に起こっていない危険性も示唆された。本稿では,本河川における本種の現状が危機的であることを具体的に報告し,本種の保全にむけた持続的な活動の構築を目指した普及活動の成果と課題についても報告する。