広島湾に注ぐ太田川と八幡川において, それぞれの河川に設けられた4つの貯水池(魚切貯水池, 樽床貯水池, 立岩貯水池, 王泊貯水池)の前後および貯水池内上下層における約20年間の水質データを集計して統計処理し, それらの長期的変動を明らかにした。すべての貯水池で共通した現象として, 貯水池のTN/TP が経年的に上昇する傾向が見受けられた。魚切貯水池では貯水池前後のデータが揃い, 貯水池で窒素・リンともトラップされ, 下流で再び人間活動によって添加されていることが理解された。貯水池でトラップされる溶存態無機窒素(DIN)と溶存態無機リン(DIP)の量を平均河川水流量とそれらの貯水池前後での平均濃度差から計算したところ, DINで6.9tNy-1, DIPで0.63tPy-1となった。仮に同様のことが太田川水系に設置された15の貯水池で起こっていると仮定すると, 広島湾に本来流入するはずだったDINとDIPをそれぞれ約30%および35%をこれらの貯水池がトラップしていると見積もられる。