広島県芦田川産コウライニゴイHemibarbus labeoとナマズSilurus asotus, また同県黒瀬川産カワムツZacco temminckiiよりイカリムシLernaea cyprinaceaを採集し, その形態を簡単に記載した。コウライニゴイとカワムツはイカリムシの新宿主であり, ナマズはわが国における新宿主である。コウライニゴイ(寄生部位: 鰓)とカワムツ(背鰭)から得られたイカリムシは成体雌, ナマズ(鰓)から得られた個体はコペポディド5期であった。1915~2007年の93年間に出版された文献に基づいて, わが国におけるイカリムシ科カイアシ類3種(イカリムシ, ナマズイカリムシ[新称]Lernaea parasiluri, ヒメイカリムシ[新称]Lamproglena chinensis)に関する情報(シノニム, 宿主, 寄生部位, 地理的分布)を整理し, 目録として示した。この整理により, イカリムシはわが国では10目17科に属する33~34種(亜種を含む)の魚類と2目2科に属する2種の両生類から記録されていることが明らかになった。また日本産イカリムシの分類学的再検討を含む今後の研究課題を示した。上記の新標準和名に加えて, Lamproglena属に対してヒメイカリムシ属の新標準和名を提唱する。