瀬戸内海における沿岸性底棲魚シマウシノシタの成熟と産卵を中心とした生活サイクルについて, 愛媛県今治市沿岸周辺海域で1999年7月から2001年11月までの間に漁獲された296尾を用いて調べた。採集個体の体長(BL)は, それぞれ雄が101-236mm(128尾), 雌が102-301㎜(168尾)で, 雌に大型個体が多く出現しており, 雌が大型化する性的差異が示唆された。本種の生物学的最小形についても雄が125㎜, 雌が175㎜と雌が大きかった。成魚の生殖腺重量指数(GSI)・肝臓重量指数(HSI)・肥満度(CF)から, 産卵期が6-8月, 産卵期に伴う産卵準備期, 回復期がそれぞれ5-6月, 8-9月, 越冬準備期は10-12月, 越冬期が1-3月という生活サイクルを推定した。本種の産卵期における卵巣からは, 単峰の卵径組成が確認された。本種の産卵は, その単峰の卵団が卵径0.7㎜以上の大型卵団となり, 卵巣における大型卵団の占有率が90%ほどに達した後, 複数回に分けて放卵されるものと判断された。抱卵数は1個体あたり3-15万個であり, 体長と抱卵数(F)に正の相関関係が認められた:F=3.23×10-5BL3.94, r;0.884。