「間」の階層性「守-破-離」の機能や構造を明らかにするため, 大学生女子10名に18音から構成された系列的聴覚刺激を提示し, それに対する音声反応を要求した。その場合の反応条件としては, 「固有」リズムの反応条件と「間」の階層性の「守」, 「破」, 「離」に対応させた3条件と合わせて4つの反応条件を設けた。反応測度は, 刺激提示から音声反応までのS-R間隔時間と音声反応から次の音声反応までのR-R間隔時間の平均値と標準偏差をとりあげた。さらに, R-R間隔時間の時系列に対して自己相関関数[R(τ)]とパワースペクトル密度関数[S(f)]を求めた。その結果, 1) 音刺激の提示がある「守」と「破」のS-R間隔時間の平均値は, 「破」の反応条件の方が「守」の反応条件よりも有意に速い反応を示し, 学習効果が認められた。また, 「守」と「破」の両反応条件ともS-R間隔時間よりも変動性は小さかった。
R-R間隔時間の平均値について, 4つの反応条件を比較した結果, 「固有」リズムの反応条件は系列位置に関係なく, 660msecのレベルで一定した間隔が保たれていた。また, 「守」と「破」の両反応条件は系列位置の構造を反映した結果を示した。しかし, 「離」の反応条件の系列位置曲線を「守」と「破」のそれらと比較した場合, 「離」の系列位置曲線は少し系列刺激の構造があいまいに処理されていることが明らかになった。さらに, R-R間隔時間の変動性は, 「破」と「離」の反応条件が他の反応条件に比べて大きかった。
2) 各反応条件に対するR-R間隔時間のR(τ)とS(f)は, つぎのとおりであった。まず, 「固有」リズムの反応条件では, R(τ)に周期性は認められず, S(f)も全員が1/f^0型スペクトルを示した。他方, 「守」の反応条件では, R(τ)に周期性が認められ, S(f)はf型スペクトルを示した。「守」の反応条件で生起した内容と同様なことが, 「破」の反応条件の半数以上の被験者にも見出された。さらに, 「離」の反応条件では, 1/f型スペクトルを示した者は見出されなかった。これらの結果から, 「破」と「離」の反応は各被験者にとって, かなり困難な課題であることが明らかになった。