第4回 機関リポジトリと著作権Q&A(改訂版)
元広島大学図書館 リポジトリアドバイザー
黒澤節男
概要
論文を執筆する際や、機関リポジトリで論文を公開する際の著作権についての注意点や必要な処理等が詳しく解説されたQ&A集です。これから論文を執筆する方、論文をリポジトリで公開する方必見です。 |
機関リポジトリと著作権Q&A
黒澤先生からの紹介文
広島大学に奉職したことがあるご縁で、九州大学退職後2007年に広島大学図書館リポジトリアドバイザーに委嘱され「機関リポジトリと著作権」という小冊子を発行したのが2008年3月。5年経って今回改訂版が発行されました。
この小冊子は、全て、Q&A形式で合計24の具体的問題について解説を施し、学会や出版社で実際にどのように規定しているかなども記載しています。
まず、Chapter1「論文執筆に関する著作権」では、研究者や学生が論文を執筆する際に気を付けるべきこと、特に、他人の著作物を自分の著作物の中で使用する場合の注意点、引用として利用する場合の著作権法上の根拠などを詳しく記述しています。
Chapter2「リポジトリ公開に関する著作権」では、登録とはどういうことか、出版社への著作権譲渡、学会に著作権が帰属している場合の利用方法、紀要の著作権処理などなどがこれまた、詳しく書かれています。
今回の改訂版では、質問項目をQ14以下Q18 まで追加し、図表・写真・楽譜の引用、二重投稿、画像や音楽データの公開、プライバシー問題などについて解説を加えています。
文部科学省省令(学位規則)が定める博士論文の公開の条件が、これまでの紙媒体でなくインターネットで公表することが義務付けられる中、著作権の問題は従来とは違った意味で重要になってくると思われます。研究者・学生にとっては、これまで以上に著作権について慎重にならざるをえない状況が生まれており、それらの方々に幾ばくかの参考にして頂ければ幸いです。
「機関リポジトリとは何かがどこにも書いてないねえ」というのが小生が送った一般の人からの反応です。この小冊子は、広島大学の教職員・学生のために書きましたので、「機関リポジトリ」についての説明を省きましたが「大学等の機関が設置するインターネット上の電子書庫のことで、当該機関の研究者、学生、職員などその機関を構成している人たちの教育研究に関する著作物(成果物)を収集・蓄積・保存し、かつ、インターネットを通じて無償で学内外へ発信するシステム」と定義付けられましょうか。筆者のこの言葉との出会いは、日本映画の名作「ビルマの竪琴」の英国軍管理下で遺骨を収集・保存している建物の入口に「REPOSITORY」という標識が掲げられていた時でした。
なお、今回の改訂版の発行に際しては、数十回のメールの交換で改訂作業を行い、URLの最新版をつぶさに点検していただくなど広島大学図書館リポジトリ前担当者の濱知美さんには大変お世話になりました。この場をお借りして心からの感謝を申し上げます。
(2013.7)