特別講演1 「学習科学が描く21世紀型授業のデザイン」

学習システム研究 1 号 60-70 頁 2015-03-31 発行
アクセス数 : 1671
ダウンロード数 : 763

今月のアクセス数 : 6
今月のダウンロード数 : 4
ファイル情報(添付)
TRDLS-jpn_1_60.pdf 655 KB 種類 : 全文
タイトル ( jpn )
特別講演1 「学習科学が描く21世紀型授業のデザイン」
作成者
収録物名
学習システム研究
1
開始ページ 60
終了ページ 70
抄録
本講演は,3つの主題で構成される。第一は,学習科学とはどのような学問か,第二は,21世紀学力とはどのようなものか,第三は,21世紀型授業とはどんなものか,20世紀型授業との違い,その特質はどのようなものか,である。

学習科学という学問は,学習心理学を比較し説明すると,次の3つの点でその違いが理解される。1つは,知識獲得モデルか知識創造モデルか。2つは,grand theory かgrounded theory か。3つは,実験室研究かデザインベースド研究か。これらの違いにもとづき,縦軸に「基本原理の追求」の有無を,横軸に「実用性の追求」の有無を置き,四象限のマトリックスを作ると,研究モデルの4つのタイプを作ることができる。

学習心理学には「基本原理の追求」が有り,「実用性の追求」が無い実験室研究であるのに対し,学習科学は両方を有し,デザインベースド研究である。学習科学は学問的にも実用的にも優れている。

現在,教育に求められているものは21世紀型学力である。それには,3つの条件が必要である。①dependable(確かな学力),②portable(活用力),③sustainable(持続可能な学力)。その中で,20世紀型学力は①に偏重し,それを克服すべき21世紀型学力は①~③を同時に達成することが必要である。それをモデルで示すと,習得と活用を同時に促す「四輪駆動モデル」となる。「わかる」(習得),「できる」(活用)の両輪と,エンジンにあたる学習意欲をもっている。エンジンがかかり「メタ認知」が働くと,学びが「自己調整学習」として機能し,「知識創造」を作り出すことができる。

20世紀型学力は「習得」ばかりで「活用」がない。そのため,子どもたちは習得した知識をどう活用していいかがわからなくなっている。また,20 世紀型授業には「習得中心」と「指導中心,支援不足」という問題点があり,これらの問題を乗り越えることが,21世紀型授業の課題である。そのポイントは,「学習者中心の授業のデザイン」「協同学習(コラボレーション)」「オーセンティックな学習課題の設定」の3つである。

総括的に言えば,①子どもは小さな勉強主体ではなく小さな研究主体であり,学会活動に学校での学習を近づけていく,②多様性を認めつつ尊重しながら,そのような社会を作れるような子どもたちを育成する,ことが21世紀の学力に求められることである。そのために行う教育は,「教育は中道を目指せ,中道は大道なり」という考えにもとづくべきであろう。
内容記述
学習システム促進研究センターキックオフ講演会: 学習,学習科学: 教育への適用
(2014年7月3日: 広島大学大学院教育学研究科開催)
NDC分類
教育 [ 370 ]
言語
日本語
資源タイプ 学術雑誌論文
出版者
学習システム促進研究センター (RIDLS)
発行日 2015-03-31
権利情報
Copyright (c) 2015 学習システム促進研究センター
出版タイプ Version of Record(出版社版。早期公開を含む)
アクセス権 オープンアクセス
収録物識別子
[ISSN] 2189-9487