ラット胎仔の脊髄再生に関する実験的研究 <原著>

広島大学医学雑誌 49 巻 6 号 189-204 頁 2001-12-28 発行
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タイトル ( jpn )
ラット胎仔の脊髄再生に関する実験的研究 <原著>
タイトル ( eng )
Spinal Cord Injury and Regeneration in the Fetal Rats
作成者
山崎 健
寄与者 国立情報学研究所
収録物名
広島大学医学雑誌
Medical journal of Hiroshima Universtiy
49
6
開始ページ 189
終了ページ 204
収録物識別子
[PISSN] 0018-2087
[NCID] AN00213202
抄録
Because the immature spinal cord was nerve growth permissive, I examined glial reactions that influence regeneration of the spinal cord in a fetal rat spinal cord injury model. Three, 7,21,and 35 days after intrauterine surgery, offsprings were killed and the thoracic and lumbar spinal cords were carefully removed from the spinal column and then cut into 10 μm longitudinal sections. These sections were stained with hematoxylin-eosin, anti-glial fibrillary acidic protein antibody (GFAP) as a marker of astrocytes, and anti-complement CR3 antibody (OX-42) as a marker of microglia. I gathered two important points facts in my study. First, there was no significant glial reactions and connective tissue scar formation comparable to the dense glial or connective tissue scar that constitutes a barrier against regenerating axons in adult rats. Second, in the group with a good walking ability, the rostral and caudal spinal cord segment were connected at white matter. In the group with non walking ability, the spinal cord segment were separated. The reason for the difference in spinal cord conditions among survivors was still unknown. I conclude that responses and regeneration of damaged spinal cord axons differs between fetus rats and adult rats.
胎内手術によるラット胎仔の脊髄損傷モデルを作製し, 免疫組織化学的手法を用いてグリア細胞の変化を経時的に観察した。成熟ラットにおける脊髄損傷を対照手術群として比較を行い, 両者におけるグリア細胞環境の相違を探ることを本研究の目的とした。脊髄損傷部において, 対照手術群では活性化されたアストロサイトの経時的な増生がみられたが, 胎内手術群では活性化されたアストロサイトは術後3日および7日の損傷後早期に僅かにみられるもののその後速やかに消退していた。対照手術群では術後21日および35日で脊髄損傷部に瘢痕形成がみられたが, 胎内手術群では認められなかった。また損傷部において, 胎内手術群では類円形のマクロファージ様の細胞が術後3日および7日の損傷早期にみられ, その後は消退していたが, 対照手術群では術後3日から21日まで認められた。胎内手術群ではマクロファージ様の細胞による破壊された組織の貪食, 処理が短時間で終了するためと考えられた。さらに損傷部では胎内手術群において術後21日および35日で脊髄の連続性を有するものには静止型のミクログリアがみられたが, 脊髄の連続性を有しないものでは静止型のミクログリアは認められなかった。損傷部より頭側および尾側に5mm離れた部分では, 対照手術群において術後21日および35日で白質に反応型ミクログリアが認められたが, 胎内手術群では認められなかった。胎内手術群ではワーラー変性が起こらないため, 反応型ミクログリアが出現しなかったと思われる。本研究により神経再生に関するグリア細胞の役割が, グリア細胞自身や周囲の細胞の成熟度, 損傷部位, 損傷部周囲の状況などの要因で変化する可能性があること, および脊髄損傷後に生じる活性化されたグリア細胞の速やかな消失が損傷した中枢神経の修復に重要な意味を持つ可能性があることが示唆された。
著者キーワード
胎仔手術
脊髄損傷
アストロサイト
ミクログリア
Fetal surgery
Spinal cord injury
Astrocytes
Microglia
言語
日本語
資源タイプ 紀要論文
出版者
広島大学医学出版会
発行日 2001-12-28
出版タイプ Version of Record(出版社版。早期公開を含む)
アクセス権 オープンアクセス
日付
[作成日] 2006-03-21
収録物識別子
[ISSN] 0018-2087
[NCID] AN00213202