広島大学生物生産学部紀要 18 巻 1 号
1979-07-16 発行

Studies on Fish Sauce

魚醤油の製造に関する研究
Miyazawa Keisuke
LE Chuong Van
Ito Keijl
Matsumoto Fumio
全文
961 KB
JFacApplBiolSciHU_18_55.pdf
Abstract
市販のイカナゴ,カタクチイワシ,マイワシ,サバおよびサンマの5種を原料として,魚醤油を製造し,温度条件,蛋白質分解酵素および麹添加の品質に与える影響を調べた。その結果,50℃,30℃,10℃および2℃の各温度条件下における魚肉蛋白質の液化率は温度が高い程よく,50℃で150日熟成後のカタクチイワシ,100日後のイカナゴを原料としたものでは,それぞれ25.3%および26.6%であった。10℃以下では液化率は数%にすぎなかった。またアミノ酸の遊離比ではグルタミン酸,グリシン,アスパラギン酸,プロリンが著しく劣り,これらを構成成分とするペプチッドが分解不完全のまま残存することが知られた。

グルタミン酸は魚醤油製造工程中に相当量環状化してピログルタミン酸に変化することが確認された。この外,未分解のまま残存するペプチッドとして,グリシルプロリン,アラニルグリシンおよびグリシルグリシンを分離,同定した。

麹の添加は30℃の熟成条件下では蛋白質液化率と遊離アミノ酸の生成にかなりの効果があったが,50℃条件下では逆に減少した。これは製品が著しく褐変することから,アミノカルボニル反応によるものと推定された。

プロナーゼの添加は無添加のものと比べ,遊離アミノ酸組成と蛋白質液化率に顕著な効果は認められなかった。

マイワシ,サバおよびサンマでは原料魚の脂質含量が高く,油焼け臭を発生し,魚醤油原料としては不適当と思われた。