中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校 63 巻
2023-05-31 発行

やせや体重減少のある児童生徒に対する養護教諭の対応頻度と知識 : 小児摂食障害に焦点をあてて

小田 幹子
佐々田 綾
全文
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Fukuyama-ChutoKyoiku-KenkyuKiyo_63_115.pdf
Abstract
本研究では,次の3点を明らかとするため調査を行った。第一に,養護教諭はやせや体重減少のある児童生徒に対しどのくらい対応しているか。第二に,やせや体重減少に関する知識を持っているか。第三に対応頻度と知識の有無に関係はあるのか,である。その結果,A市養護教諭への調査で次の3点が明らかとなった。①肥満度−20%以下と抽出され,かつ肥満度−30%以下になっていない児童生徒にかかわる養護教諭の対応頻度については,「対応群」は対応の種類によって32.1%~69.8%であり,本人への対応は先行研究と比較して低い対応水準であった。②「知識あり群」は知識の内容によって24.6%~58.5%であり,先行研究と比較し低い知識水準であった。③やせや体重減少による重症度の見極めについて「知識あり群」であったとしても,月経の有無や脈拍の状態という指標を伴うと「知識なし群」と比較し対応頻度に有意な差はみられない,である。これらから,A市の養護教諭にとってやせや体重減少のある児童生徒本人への対応に結びつかない要因があること,A市の養護教諭の身近にある発育評価資料では,肥満度−20%以下と抽出され−30%以下になっていない児童生徒について医療側の求める対応水準・知識水準に到達できないこと,成長曲線に関わる養護教諭向けの資料に月経の有無や徐脈などの観察項目の必要性とその意義について記載するとよいことが示唆された。
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