国連「障害のある人の権利条約」の批准を想定して,昨年度は権利条約が批准された時の就学相談のありかたについて論じた。本稿では,権利条約が批准された時のインクルーシブ教育が通常の教育に与える影響について論じる。最初に,小学校,中学校それに高等学校の現状や2006年のPISAの結果を分析した。そして,発達障害と同じような特徴をもつ子どもの割合以上に,教科学習に困難を示す子どもの割合が高く,PISAで上位10位の国を見ると,国内法でインテグレーションやインクルージョンを規定している国がほとんどであり,日本においてインクルーシブ教育を実施する合理的意味があることを明らかにした。そして,小学校,中学校それに高等学校の新しい学習指導要領解説を点検することによって,障害や遅れのある児童生徒の教育がどのように説明されているのかまとめた。そして,学習指導要領解説をインクルーシブ教育に近づけるためには,何を加えるべきかを論じた。