地方分権に向けての道州制や人口減少・高齢社会での地域間経済力格差の拡大が懸念されるなかで、地域間財政調整は重要課題である。現在の財政調整は、理由の如何を問わず経済厚生格差の存在そのものを根拠とする「社会保障的根拠」に依っているが、それに加えて、地域間の「移転」の補償を根拠とする「移転補償的根拠」に基づく地域間財政調整が重要である。ただし、「移転補償的根拠」を説得的に示すためには、地域間移転関係を含む「地域間会計」の概念が重要となる。しかしながら、地域間会計は言うは易いが困難も多い。そこで、いずれは地域間会計に発展させる可能性を視野に入れながら、その準備として、まず地域相互間の取引を含まない「地域会計」を作成することを目指す。
以上のような考え方を背景にもちつつ、本稿の目的は、地域会計の1つのタイプについて、その中で、経済主体間の移転関係を陽表的に表す地域移転会計を作成し、いくつかの地域について移転会計から見た地域特性を示すことである。これは極めて簡単なプロトタイプであるが、発展の可能性をもつアプローチである。