MRE11は出芽酵母の減数分裂の組換え変異株より同定されたDNA二本鎖切断修復遺伝子である。進化上酵母からヒトに至るまで構造的によく保存された遺伝子であり, 高等真核生物においてはRAD50およびナイミーヘン染色体不安定症候群の原因となるNBS1と蛋白質複合体を形成する。その変異が毛細血管拡張性失調症に類似した病態において発見されたことから, ヒトにおいて放射線感受性, 染色体安定性に関与しているものと考えられる。また, 遺伝性乳癌に関与するBRCA1と蛋白質複合体を形成することから, 発癌への関わりも示唆されている。このような多機能を有するヒトMRE11の構造に関してはバリエーションが存在することが知られているが, それらの分布, 出現頻度は知られていないため機能解析の妨げとなっている。そこで本研究では正常単核球および乳癌におけるMRE11 cDNAの構造解析を行った。その結果, エクソン4に4塩基対欠失のスプライスバリアントが存在すること, これまで議論のあったエクソン16を有しないmRNAの発現は極めて稀であること, 終止コドンの位置はPaullらの報告が正しくPetriniらの報告は確認できないことが明らかとなった。この解析により, これまで議論のあったヒトMRE11の構造が明らかにされ, 機能解析に重要な情報がえられた。