本研究の目的は,65歳以上の高齢者(以下,被介護者)の介護を在宅で主に担う家族介護者(以下,主介護者)の介護負担感に,被介護者の排尿状況や主介護者・被介護者各々の各属性がどのように関連しているかを明らかにすることである。介護負担感の把握にZarit介護負担尺度日本語版(以下,J-ZBI),尿失禁の分別判定に排尿チェック表を各々用いて作成した質問紙を,協力施設の対象者162名に配付した。その結果,101名(62.3%)から有効回答を得,内94名(93.1%)の被介護者に尿失禁を認めた。J-ZBI得点は,被介護者に尿失禁「有」群(38.6±19.2点)が「無」群(29.3±22.6点)よりも高かった。主介護者の介護負担感を示すJ-ZBI得点は,被介護者の排尿時に「介助不要」より「半・少し介助」を要す方が高い傾向を示した(p < 0.1)。また,尿とりパッド「着用」群を介護する主介護者の方が「非着用」群を介護する者よりJ-ZBI得点が高い傾向を示した(p < 0.1)。一方,介護支援者「有」群は「無」群よりJ-ZBI得点が低かった(p < 0.05)。これらの結果から,排尿介護による介護負担感を低減するためには,尿とりパッド「着用」や排尿時に「半・少し介助」が必要な被介護者に,トイレ移動や排尿時の下着の上げ下げ・尿とりパッド交換のためのリハビリテーションを実施し,被介護者の排尿行動能力の向上に努めることが必要であると考えられた。