施設入所中の10名の認知症高齢者に園芸活動を実施し,園芸活動が対象の認知機能と心理社会的機能に及ぼした影響について検討した.園芸活動の前後にはFive cognitive tests (5cog) を行い,各セッションの前後には唾液中クロモグラニンA (CgA) を測定した.また,各セッション終了後には, 『園芸活動運営記録用紙』にセッション中の対象者の状況を記録し,その内容を5cogやCgAの結果と併せて分析した.
その結果, 5cogの『単語記憶』に統計学的に有意な差を認めたり,写真を用いた活動の振り返りでは対象者同士の会話の発展を認めたりするなど,認知機能への効果が確認された.一方,作業方法が理解できず,作業の遂行が困難だったセッションではCgA値が上昇していたり,難聴を有する者は全てのセッションでCgA値が上昇していたりと精神的ストレスを増加させる可能性のある状況について確認することができた.