杉島・賀集(1992)では, 表記形態が異なると語のもつ内包的意味が異なることが示唆され, その原因として表記形態と表記頻度の影響が指摘された。そこで, 本研究では表記形態と表記頻度の影響とともに, その交互作用についても細かく検討した。実験では, 表記形態の影響を受けない音韻で概念を呈示する事態を新たに加え, 各表記形態で示された概念との内包的意味の違いの差から考察を行った。実験の結果, 1)全体的に漢字に比べ仮名表記の概念の方が音韻で示された概念に近い内包的意味をもつこと, 2)漢字・仮名表記のどちらにおいても, 日頃の生活においてよく見る表記で書かれた概念に該当する場合には, 音韻で示された概念に近い内包的意味をもつこと, 3)仮名でよく見る概念では, 漢字に比べ仮名表記の方が音韻で示された概念に近い内包的意味をもつが, 漢字でよく見る頻度が高い概念では, 漢字と仮名という表記の違いによる差は認められないこと, が示された。そして, これらの結果から, 音韻呈示による概念の内包的意味に接近するためには, 仮名表記であるという表記形態と, よく見る文字であるという表記頻度が重要であり, さらに, この2つの要因が同じ程度に重要であることが考察された。