本研究の目的は, 心理的反発理論の立場から, コミュニケーションの検閲によってもたらされる態度変容を実験的に検討することであった。
用いた操作変数は, 高・低2水準の検閲者の勢力および高・低2水準のコミュニケーションの自由の重要性であり, 検閲者の勢力が大きいほど, また, コミュニケーションの自由が重要であるほど, 検閲によって生じるコミュニケーションの立場の方向への態度変容は大であろうと予想した。
被験者は女子大生200人で, 4実験群と1統制群に対して無作為に配置した。話題は大学における服装(制服-私服)であり, 検閲されたコミュニケーションの立場は制服反対, 検閲者である大学当局の立場は制服賛成とした。実験操作および実験前・後の質問紙はすべてパンフレットに含まれた。なお, 実験は, 他の女子大における服装に関するコミュニケーションの検閲事件に対する感想を聞くという設定で行った。
本実験で得られた主な結果は次の通りである。
(1)操作変数は態度変容に何の効果も及ぼさず, 仮説は支持されなかった。
(2)検閲は, 元々の立場がコミュニケーションと反対であった受け手の間でのみ, コミュニケーションの立場の方向への態度変容を生じさせた。
(3)検閲は, コミュニケーション話題である服装が重要だと元々認知していた受け手に対して, コミュニケーションの立場の方向への態度変容を生じさせた。
本実験で得られた結果は, すべて心理的反発理論によって解釈された。