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第2回 近代文学試論

広島大学近代文学研究会

概要

広島大学近代文学研究会の発行する「近代文学試論」は、1966年の創刊から現在までに44号の刊行を数える、長い歴史を持つ研究誌です。このたび、その全ての号をHiRで閲覧することができるようになりました。

バックナンバー目次

創刊号(1966年5月)

有元伸子先生からの紹介文

『近代文学試論』は、広島大学近代文学研究会が発行している研究誌です。

1966年5月に、当時の文学部教授・磯貝英夫先生のもとで学ぶ大学院生を中心に創刊されました。大学研究会による近代文学研究専門誌で40年以上も継続発行しているものは、他大学を見回してもほとんどありません。最近は研究誌といえどもカラフルでおしゃれな装訂のものも多いですが、わが『近代文学試論』は、白い中質紙の表紙に明朝体で誌名と目次が印刷されているだけの、きわめてシンプルな造りです。それが逆に、息長くつづく研究誌の歴史と内容への自信とを物語っているようです。

2007年8月現在で、44号まで発行。創刊から3年間は年2冊刊行でしたが、その後は年刊で、毎年12月25日に発行しています。

毎号5~10本、明治から現代までバラエティに富んだ研究論文が並びます。当初は明治・大正期の文学研究が主でしたが、最近では、村上春樹・川上弘美・金原ひとみなど現在活躍中の作家に関する研究が増えてきました。また、節目となる10号ごとに特集号を組んでいます。第10号第20号は「井伏鱒二研究」、第30号第40号は「文学史の新視角」です。このうち第20号の井伏鱒二特集号をもとに単行本『井伏鱒二研究』(磯貝英夫・編、渓水社)が上梓され、井伏研究の定本として高い評価を得ています。井伏は広島県出身の作家であり、地元ならではの調査や考察がなされ、研究の中核をなす作家の一人です。

『近代文学試論』には、頻繁に引用されたり、必読論文の集成書に再録される論文も、数多く掲載されてきています。最近の例では、加藤典洋『太宰と井伏――ふたつの戦後』や猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治伝』に紹介されたことによって、本誌第29号所収の川崎和啓氏「師弟の訣れ──太宰治の井伏鱒二悪人説」が再び注目を浴びました。

大学院生の研究の芽を育む場として、また大学院から巣立った一線の研究者の研鑽の場として、『近代文学試論』は有効に活用されてきました。あと数年で半世紀号を迎えますが、長い歴史におごることなく、地道さと先鋭さとを兼ね備えた近代文学研究誌として、努力を重ねていきたいと思っています。

このたび、広島大学の学術情報リポジトリに本誌の本文データが公開されたことは、研究成果を広く還元していくうえで、とてもありがたく思っています。リポジトリ公開を機に『近代文学試論』の目次も公開でき、これまで本誌を手にする機会のなかった方々にも掲載論文を目にしていただきやすくなりました。ぜひとも近代文学研究の醍醐味を味わっていただき、ご批正いただけることを願っております。

(2007.8)

「近代文学試論」目次