異文化間の葛藤場面において欲求不満を感じるとき、相手文化と自文化に関わる認知的反応について検討し、その方向性をまず整理した。すなわち研究1において、日本にいる中国人留学生とその保証人を対象に、相互の対人関係における困難についての調査を基に、葛藤場面における反応を整理するマトリクスを考案した。次いでその枠組に基づいて事例を解析した。研究2では、日本人と留学生の間の実際の問題事例を取りあげ、マトリクスを用いて反応を整理した。その中で、両者の仲介役として機能した日本語教師の役割について、特に取りあげて論じた。そこから異文化間の葛藤を整理し相互理解を導くための、「異文化間インターメディエータ-」の役割を特定した。最後に、異文化適応の層構造モデルを示し、適応の次元の進行について理論化を試みる。