脳灌流の画像化は現在主にsingle-photon emission computed tomography(SPECT)でなされているが, positron emission tomography(PET)や造影剤を用いたMRIの手法も用いられている。更に近年, MRIの新しいパルス系列として, arterial spin labeling法(ASL法)を用いたMR脳灌流強調画像が報告されてきている。今回我々は脳疾患患者に対して, 臨床用の1.5T超伝導MRI装置を使用し, ASL法を応用したパルス系列であるFAIR(flow-sensitive alternating inversion recovery)と, 造影剤を用いた灌流強調画像(perfusion-weighted image, 以下PWI)を比較検討した。結果は以下の通りである。1.PWIで高灌流を示した8病変のうち7病変がFAIR画像でも高信号を示し, 高灌流病変に対するFAIRの検出率は88%であった。2.PWIで低灌流を示した41病変のうち13病変がFAIR画像でも低信号を示し, 低灌流病変に対するFAIRの検出率は32%であった。3.PWIで低灌流を示した病変で, FAIRで検出されたものはそうでないものに比較して相対的脳血液量と相対的脳血流量が有意に低かった。4.FAIRで灌流異常が検出された病変については, 相対的脳血流量あるいは相対的脳血液量とFAIRの信号強度の間に正の相関が見られた。5.PWIで無信号を示した7病変のうち, 5病変はFAIR画像で明瞭な高信号として検出された。FAIRはbackgroundに対する脳実質の信号が低く, 低灌流病変に対する検出能に問題があるが, 半定量的に脳血流の評価が可能であり, 臨床上有用と考えられた。