本研究では,広島大学東広島キャンパスを対象として,悉皆調査によりすべての石碑の分布や属性,特徴を明らかにすることで,石碑が有する文化的・歴史的価値を議論する契機となることを目的とした。調査の結果,147基の石碑を確認し,その分布は教育学部と工学部でそれぞれ4割に達し,学部の偏りが顕著であること,建立年代に着目すると,東広島キャンパスの移転前の石碑は103基と全体の約7割で,多くが移転前に建立されたことなどが明らかとなった。広島大学は,医学系学部・研究科・施設をのぞくすべての学部などが東広島キャンパスに移転すると同時に石碑も集まることになった。移設により元々建立された地から離れたことで建立当初の意義を失った側面もあるが,多数の石碑が一つのキャンパスに移設されたことで散逸を防ぎ,前身校から新制広島大学,そして統合移転から現在までの歴史を繋ぐ貴重な資料となり得ることが示唆された。