本稿は、日本人大学生の中国語作文に見られる副詞の誤用を記述し、分析したものである。誤用のタイプは、1)副詞の語順、2)副詞の脱落、3)副詞の添加、4)副詞の区別使用、5)統語範疇の混同の5つから構成されている。副詞の語順については、"经常"、"快要"、"实在"、"差不多"などが文頭に置かれる誤用や、"一块儿"と"一下"が文末におかれる誤用を分析した上で、"都"や"常常"を例に、2つ以上の副詞が並べられる際の語順の問題に言及し、"将"と"已经"が語順によって生じる意味の違いを指摘した。副詞の脱落の問題としては、まず、"一下"と"点儿"をめぐって、一般的な脱落の問題を議論した。次に"几乎"に呼応して使われる"都"や"全"、"・除了・・・"構文における"还"、"早在・・・・"構文における"就"、"我想・・・・"構文における"一定"、比較文における"更"や"还是"が添加されるといった副詞の呼応法の問題を考察した。さらに複文において、"也"、"又"、"就"、"在"などの脱落を例に挙げ、従属文に呼応して主文の中で共起する副詞の使用問題に触れつつ、"从・・・・就・・・・"、"只要・・・・就・・・・"、"即使・・・・也・・・・"のように、連詞(接続詞)と呼応して用いられる副詞の脱落問題を検討した。副詞添加の問題については、"都"、"就"、"已经"、"很"等が誤って添加される問題を取り上げ、"忽然"と"很"、"这么"と"很"、"比什么"と"最"の併用に見られる副詞の濫用を例にして、分析を展開した。副詞の区別使用に関しては、7つのグループに分けて論を進めた。まず、程度副詞として、"再"と"更"、"更"と"也"、"一点儿"と"有一点儿"、"越发"と"更加"および"进一步"の区別を明確にした。時間副詞として、"经常"と"总是"、"偶尔"と"有时"、"一点儿"と"一会儿"、"从前"と"以前"、"一旦"と"暂时"、"就"と"已经"の使い分けを明らかにした。また、範囲副詞としての"也"と"都"や、重複副詞としての"再"、"还"、"又"の相違点を示し、語気副詞の"太"と"真"が陳述文にそぐわないという特徴、さらに"必定"と"一定"の相違や、推測副詞の"大概"と"大约"、否定副詞の"没"と"不"、"全然"と"根本"の相違の解釈を試みた。統語範疇の混同の問題としては、形容詞"整个"と"种种"を副詞に用いたり、逆に"几乎"と"恐怕"を形容詞に用いたりする副詞と形容詞の混同を検証した。副詞"好像"の代わりに使われる"显得"や、副詞"一直"または"还"の代わりに使われる"继续"を例にして、副詞と動詞の混同を分析した。最後に連詞"或者"と副詞"也"の混用や、"又・・・・又・・・・"と"或者・・・・或者"の誤用を取り上げ、連詞と副詞との混同を検討した。