広島大学マネジメント研究 20 号
2019-03-25 発行

VATグループ税制

VAT grouping rules
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Abstract
EUの付加価値税(以下「VAT」という)においては,グループ内取引にVATの支払いと控除とが生じないVATグループルールという制度がある。一方,我が国の法人税において,平成22年度から100%完全支配関係にある法人同士を一体とみて,課税を行うグループ法人制度が導入された。他方,消費税においては,法人税において連結あるいはグループ法人制度が適用される取引においても課税取引等を構成し,企業の垂直統合の流れとは一線を画している。
EUのグループ税制では,メンバー間の物又はサービスの引渡しについて,VAT課税の対象としない。グループ内のメンバーにより又はメンバーに対しなされた物又はサービスの提供は,メンバー代表により又はメンバー代表に対してなされたものとみなす。企業が市場を通じ取引するには様々なコストがかかる。こうしたコストを削減するため企業は,市場を通じての取引を内部化する組織の垂直統合を行う場合がある。グループ税制は,税制が組織の垂直統合の阻害要因とならない様,またグループ取引が租税回避に用いられない様,設けられている。
一方,国境を超える「クロスボーダー」のグループ間取引においては,納税と控除の同時発生がないこと,又は税率が異なることが考えられることから,原則としてVAT グループ税制は適用されない。また物に関する限り,通関に伴う国境税調整が働くから,第三者間取引と同様に扱われる。サービスについては,国境税調整が働かず,事業者間取引について国内輸入業者に課税する「リバースチャージ」が適用される場合がある。とりわけ,海外からのサービス取引をグループ税制上どの様に扱うかについては,EU各国でもその取扱いが異なる。我が国においては,企業の垂直統合への対応を進めるため,現行制度の精緻化を図ることが先ずは求められる。そのうえで,国内のみを対象とするグルーピング制度の導入を検討する必要があると考える。
著者キーワード
付加価値税
VAT
消費税
グループ税制
クロスボーダー取引
企業の垂直統合
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