ダウン症児の長期的な発達状況・社会適応について,広島市児童療育指導センターを受診した解析可能な98名について,後方視的に検討した。センターでの療育支援を受けていない1974年4月以前の出生例34名(I群),児童療育指導センターで療育支援が始まった1974年4月以降出生例43名(II群),1985年4月以降に出生し早期療育を受けた21名(III群)の3グループに分類した。知能指数(IQ)はいずれの群においても年齢とともに低下し,3歳時の言語理解は早期療育を実施したIII群で良好であった。18歳でのI群・II群のIQは重度域が多かった。18歳でのI群・II群の生活難易度は,軽度から中等度が多かったが,I群に比較し,II群のほうが有意に軽度であり,IQおよび,療育的支援の有無に関係していた。また,18歳時における合併症は,先天性心疾患・てんかんなど小児期特有のものに加え,肥満,糖尿病,引きこもり,統合失調症など,思春期,青年期に特徴的な合併症の出現が認められた。しかし,合併症の有無とIQおよび生活における難易度に関連は認められなかった。以上より,ダウン症のQOLの向上には小児期から成人期に到るまでの医療・教育・福祉の包括的な支援の構築の重要性が示唆された。