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ID 31764
本文ファイル
著者
田中 武
NDC
電気工学
抄録
今日、MOSデバイスは、コンピュターに代表される電子機器に必要不可欠なものになっている。電子デバイスの高集積、高密度化更に進めて三次元化は、電子機器の高速化、高密度化へと進められている。そうした流れの中で、半導体素子は微細化され、素子を構成する半導体および絶縁膜は薄くて均一な膜が要求されている。したがって、薄膜作製時に、低損傷で高い制御性を持つ技術が必要になって来ている。

筆者は、低損傷、反応選択性および空間選択性という特徴を持つ光励起プロセスに着目し、その光励起プロセスを用いて半導体および絶縁膜の形成を試みた。本論文は、その中でもSiとSiO2のレーザ励起CVDの研究成果を中心にまとめたもので論文「レーザ誘起プロセスによる薄膜形成に関する基礎研究」の要旨は下記の通りである。

第1章では、本研究を行なうにあたり、その意義と目的を明らかにし、レーザプロセスに関する研究分野の歴史的背景を概説した。本研究の目的は、(1)冷却基板上にガス凝縮層を形成し、吸着層内で起こるレーザ誘起光化学分解により薄膜を形成する方法、すなわち、レーザ誘起クライオジェニツクCVD法を用いて、多結晶Si薄膜の選択成長を実現する。(2)レーザ誘起クライオジェニックCVD法において、冷却基板上に形成されるガス凝縮層厚さを制御することにより、Si薄膜の単原子層成長を実現する。(3)Si2H6+N2O混合ガスを用いるレーザCVD法により堆積する酸化膜の組成比制御及び化学量論的組成比をもつSiO2膜を形成する。(4)乾燥酸素中にNF3ガスを添加することにより酸化反応をエンハンスさせ、低温で高品質な酸化膜が形成できることおよびレーザ照射により更に低温で酸化膜を形成する。等である。

第2章では、レーザ誘起プロセスを理解する上で、最も重要な気相光解離反応を記述した。レーザ照射下での気相/表面相互作用について述べた。

第3章では、レーザ誘起クライオジェニックCVD法を用いて、冷却基板上に、Si2H6凝縮層を形成し、ArFエキシマレーザ照射部のみに多結晶Si薄膜を選択的に成長できることを示した。その成長メカニズムは冷却基板上に凝縮したSi2H6分子の非線形光分解反応による準安定Si膜形成と引き続く光励起結晶化プロセスによると解釈された。

第4章では、Si2H6ガスを用いたレーザ誘起クライオジェニックCVD法において、成長表面に形成されるSi2H6凝縮層の厚さを制御することによりSi薄膜を単原子層ずつ成長できることを示した。さらに、堆積させたSi薄膜の表面ラフネスは±10A以内となり、平坦性の秀れた膜となっている。

第5章では、Si2H6+N2O混合ガス系を用いたレーザCVDにおいてSi2H6とN2Oの光分解量をガス流量比、反応圧力、レーザ繰り返し周波数を制御することにより酸化膜の組成をコントロールすることが可能であり、化学量論的組成比を持つSiO2薄膜が形成できる。また、絶縁耐圧7.9MV/cm、固定電荷密度1.3×1011cm-2と熱酸化膜と比較しても良好な酸化膜が得られる。

第6章では乾燥酸素中に微量のNF3ガスを添加し、ArFエキシマレーザを照射を行なうことにより、ガス相と酸化膜表面でNF3ガスのレーザ光分解により生成された弗素ラジカルが酸化反応を増速する。その結果、6nm以上の酸化膜が400℃20分の低温酸化で得られた。

本研究によって得られた成果の工学的意義はおよそ次のようなものである。

(1)レーザ誘起クライオジェニックCVD法を用いて、多結晶Si薄膜を零下69℃という低い温度で選択的且つ高速に堆積できることを明らかにした。

(2)冷却基板上に形成されるSi2H6凝縮層厚さを制御することによりSiの単原子層成長ができることを明らかにした。

(3)Siの単原子層成長を実現するセルフリミティング機構は、Si2H6分子の吸着第一層目の光化学反応が著しく増速されていることによることを示した。

(4)Si2H6+N2O混合ガス系を用いたArFエキシマレーザCVDにおいて、Si2H6とN2Oの光分解種の量を制御することにより、化学量論的組成比を持つSiO2膜が形成できることを明かにした。

(5)ArFエキシマレーザを用いたフッ素増速酸化において、6nm以上の酸化膜が400℃20minの低温酸化で形成できることを明らかにした。
目次
梗概 / p1
第1章 序論 / p3
 §1.1 本研究の目的 / p3
 §1.2 本研究の歴史的背景 / p4
 文献 / p5
第2章 レーザ誘起プロセスに関する主要な理論 / p7
 §2.1 はじめに / p7
 §2.2 気相光解離反応 / p8
 §2.3 レーザ照射下での気相/表面相互作用 / p14
 文献 / p19
第3章 ArF エキシマレーザを用いたSiの選択的冷却CVD / p20
 §3.1 緒言 / p20
 §3.2 Si薄膜の形成方法 / p20
 §3.3 Si薄膜の選択CVD / p22
 §3.4 Si薄膜形成の反応モデル / p26
 §3.5 Si薄膜の膜質評価 / p34
 §3.6 まとめ / p36
 文献 / p36
第4章 ArF エキシマレーザを用いたSiの単原子層成長 / p37
 §4.1 緒言 / p37
 §4.2 冷却CVD法によるSi薄膜の形成方法 / p37
 §4.3 単原子層成長の機構 / p38
 §4.4 成長表面モフォロジ / p43
 §4.5 まとめ / p45
 文献 / p45
第5章 ArF エキシマレーザを用いたSiO₂のCVD / p46
 §5.1 緒言 / p46
 §5.2 SiO₂薄膜の形成方法 / p46
 §5.3 SiO₂薄膜の成長機構-ガス流量比依存性- / p47
 §5.4 SiO₂薄膜の成長機構-反応圧力依存性- / p55
 §5.5 SiO₂薄膜の電気的特性 / p60
 §5.6 まとめ / p60
 文献 / p60
第6章 ArF エキシマレーザを用いた弗素増速酸化膜の形成 / p62
 §6.1 緒言 / p62
 §6.2 弗素増速酸化膜の形成方法 / p62
 §6.3 弗素増速酸化膜の酸化機構 / p63
 §6.4 酸化膜のエッチングと酸化誘起欠陥 / p66
 §6.5 清浄Si表面のin situ弗素増速酸化膜 / p69
 §6.6 弗素増速酸化膜の界面構造 / p72
 §6.7 レーザ酸化 / p76
 §6.8 弗素増速酸化膜の電気的特性 / p78
 §6.9 まとめ / p81
文献 / p82
結論 / p84
謝辞 / p86
本研究に関する発表論文リスト / p87
SelfDOI
言語
日本語
NII資源タイプ
学位論文
広大資料タイプ
学位論文
DCMIタイプ
text
フォーマット
application/pdf
著者版フラグ
ETD
権利情報
Copyright(c) by Author
関連情報(references)
1. M. Morita. S. Aritome, T. Tanaka and Ni. Hirose, "Fluorine-enhanced photooxidation of silicon under ArF excimer laser irradiation in an O2 + NF3 gas mixture", Appl. Phys. Lett.. 49 (1986) 699.
2. T. Tanaka, M. Takakura and M. Hirose, "Early Stages of Fluorine Enhanced Oxidation of Silicon", Proc. of the 6th Int. Symp. on Passivity (Sapporo, 1989) to be published.
3. T. Tanaka, H. Nakano and M. Hirose, "Stoichiometry Control in Laser CVD SiO2", Proc. of the 172nd Meeting Electrochemical Society (Honolulu, 1987) pp.247-254.
4. T. Tanaka, K. Deguchi and M. Hirose, "Initial Stage of Laser-Induced Selective Chemical Vapor Deposition of Silicon", Jpn. J. Appl. Phys. 26 (1987) 2057.
5. Tanaka, K. Deguchi, S. Miyazaki and M. Hirose. "Selective Growth of Polycrystalline Silicon by Laser-Induced Cryogenic CVD", Extended Abstracts of the 20th (1988 International) Conference on Solid State Devices and Materials, p.61.
5'. T. Tanaka, K. Deguchi, S. Miyazaki and M. Hirose, "Selective Growth of Polycrystalline Silicon By Laser Induced Cryogenic CVD", Jpn. J. Appl. Phys. Lett.. 27 (1988) L2149.
6. T. Tanaka. T. Fukuda, Y. Nagasawa, S. Miyazaki and M. Hirose, "ATOMIC LAYER GROWTH OF SILICON BY EXCIMER LASER INDUCED CRYOGENIC CVD". Extended Abstracts of the 21th Conference on Solid State Devices and Materials, p.53.
7. T. Tanaka, T. Fukuda, Y. Nagasawa, S. Miyazaki and M. Hirose, "ATOMIC LAYER GROWTH MECHANISM OF SILICON BY EXCIMER LASER INDUCED CRYOGENIC CVD". Proc. of 1989 Dry Process Symposium (Tokyo. 1989) 103.
関連情報URL(references)
http://dx.doi.org/10.1063/1.97572
http://dx.doi.org/10.1143/JJAP.26.2057
http://dx.doi.org/10.1143/JJAP.27.L2149
学位記番号
乙第1977号
授与大学
広島大学(Hiroshima University)
学位名
博士(工学)
学位名の英名
Engineering
学位の種類の英名
doctoral
学位授与年月日
1990-03-08
部局名
工学研究科