ID 31810
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著者
西 孝子
NDC
生物科学・一般生物学
抄録
網膜における視細胞と比較すると、眼外光受容器の光受容に関する研究は遅れている。

本研究の第1章ではイソアワモチの眼外光受容器A-P-1の細胞内光情報伝達機構が調べられた。その結果、A-P-1において、光感受性のK+イオン電流は細胞内cGMPによって発生するが、cGMPの加水分解はその電流を抑制し光受容器電位、すなわち光応答を導くことが示された。またA-P-1の光応答は、cGMPの加水分解に関与した同じGタンパク質を経由して生じるIP3によって促進されることも示唆された。

第2章では、A-P-1と同じ腹部神経節に存在するEs-1の光応答が調べられた。Es-1は、他からのシナプス入力がない状態では、K+コンダクタンスの減少による脱分極性の光応答をおこない、A-P-1と同様に自ら光に応答する眼外光受容器として機能することが示された。このEs-1の光応答のイオン機構はA-P-1のそれと共通するが、580nmに最大感度を示す点でA-P-1と異なっていた。Es-1は正常では490nmに最大感度を示すA-P-1から抑制性のシナプス入力を受けた。このA-P-1からEs-1へのシナプス伝達は前細胞の活動電位を必要とせず、閾値以下の持続時間の長い電位変化で十分可能であった。かくて、Es-1の光応答は長波長域ではそれ自体の応答による興奮性(脱分極)の応答となるが、短波長域ではA-P-1由来の抑制性(過分極)のシナプス応答を示し、光の波長によって応答の極性が変化し、波長弁別を行っていることが示された。

最後の第3章において、イソアワモチの生息地での生態観察及び室内での行動実験を行った。イソアワモチに波長の違いに依存した行動が見られ、このような行動を制御するのに、上述のA-P-1とEs-1のような光受容系を利用する可能性が高いことを示した。

本研究のように、眼外光受容器の波長弁別(色弁別)機能を示した報告は他に知られていない。一方、色識別の機構は高度に分化した網膜において数多くなされているが、未だその解明にはほど遠いのが現状である。かくて、イソアワモチのように構造が単純で未分化の眼外光受容系における色識別の知見は、系統発生学的に高度に発達した光受容系(網膜)における色識別の解明に、少なからず寄与することが期待される。
目次
目次 / p1
序論 / p4
第1章 イソアワモチ眼外光受容器の細胞内光情報伝達系について / p6
 1.はじめに / p6
 2.材料と方法 / p7
 3.結果 / p10
 4.考察 / p14
第2章 イソアワモチ眼外光受容系で生じる波長弁別機構について / p18
 1.はじめに / p18
 2.材料と方法 / p19
 3.結果 / p20
 4.考察 / p27
第3章 イソアワモチの行動に対する光環境の影響 / p31
 1.はじめに / p31
 2.方法 / p32
 3.結果および考察 / p33
まとめ / p37
謝辞 / p39
引用文献 / p40
付図とその説明
SelfDOI
言語
日本語
NII資源タイプ
学位論文
広大資料タイプ
学位論文
DCMIタイプ
text
フォーマット
application/pdf
著者版フラグ
ETD
権利情報
Copyright(c) by Author
学位記番号
乙第2227号
授与大学
広島大学(Hiroshima University)
学位名
博士(学術)
学位名の英名
Science
学位の種類の英名
doctoral
学位授与年月日
1992-03-04
部局名
総合科学研究科