広島外国語教育研究 23号
2020-03-01 発行

Memories of Sail and Steam in Joseph Conrad’s ‘Youth’

ジョウゼフ・コンラッド「青春」における帆船と蒸気船の記憶
Enokida, Kazumichi 外国語教育研究センター 広大研究者総覧
Davies, Walter 外国語教育研究センター 広大研究者総覧
Fraser, Simon 外国語教育研究センター 広大研究者総覧
本文ファイル
抄録
本稿では,サールの虚構論および「社会的現実の構成」論を援用しつつ,ジョウゼフ・コンラッドの短編「青春」を,主に船舶技術の変遷という背景テーマとの関連から論じる。前半では,「青春」におけるジュディア号の創作上の航海を,本作のもととなった実際のパレスチナ号の航海と比較する。両者の相違および1880年代の船舶技術を検証する中で,帆船から蒸気船への海運における主役の交代が,「青春」における重要な背景テーマであることを論じる。
本稿の後半では,「青春」を多読教材(graded reader)化することの有用性を考察する。「青春」は『ロード・ジム』『闇の奥』とともに三部作をなす作品であり,本作におけるジュディア号の航海と,『ロード・ジム』におけるパトナ号の航海は,プロット上の役割に共通点がみられる。『ロード・ジム』と『闇の奥』はすでに多読教材化されており,「青春」がそれらを補完することになる。また本作は短編小説であるため,多読教材化にあたり会話の縮約が不要である上,「語りの間接性」や「遅延解読」といった,コンラッド三部作の主要要素を解説するページの付加も可能だろう。さらに「青春」における船員達の行動は当時の船舶技術の変遷を背景としているため,本作はその背景テーマを読み取るのに適した教材である。最後に,簡潔なプロットと印象的な情景描写により,本作は読み物教材としての魅力を十分に有している。
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