広島外国語教育研究 20号
2017-03-01 発行

Speech Acts, Social Reality, and the Cooperative Principle in Joseph Conrad’s Lord Jim

『ロード・ジム』における言語行為,社会的現実,協調の原理
Davies, Walter 外国語教育研究センター 広大研究者総覧
Enokida, Kazumichi 外国語教育研究センター 広大研究者総覧
Fraser, Simon 外国語教育研究センター 広大研究者総覧
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抄録
本稿では,ジョウゼフ・コンラッドの小説『ロード・ジム』の分析を通じて,語用論理論の有用性を検証する。分析にあたり参照するのは,J. L. オースティン,J. サール,H. P. グライス,以上の三名の哲学者と,応用言語学者H. G. ウィドウソンによる理論である。言語行為,社会的現実,談話,協調の原理といった概念を援用し,『ロード・ジム』を,作中より抽出された三カ所の会話部分に特に焦点を当てて分析する。これにより,語用論理論が小説の分析にどの程度有用であり,また小説の読解が,本稿における語用論的枠組みにどのような課題を投げかけるかを探る。

分析の中で,オースティンの『言語と行為』に基づく言語行為論の枠組みが,談話の分析に有用であることが示された。また,文同士の結束性を明らかにすることを目的としたウィドウソンの談話分析の手法も,言外の含みを精査する上で有用であった。一方,発話内行為を示す動詞を探るために間接話法を利用するオースティンの手法には問題が見られた。さらに,本小説においては口頭のやりとりが多種多様であることから,どこか信用できない対話者との関わりにおいては特に,協調の原理が限定的である点も問題であった。
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