本研究は,専門科学者がおこなう「真正な実践」の解明を試みる共同研究の1 つである。共同研究における本稿の位置づけは,知識の社会領域である。地理学者の研究を対象に地理学における学びの過程の分析を行い,地理教師が教育実践のために論文を読み解く際に,何を,どのように活用できるかを考察する。
本稿は,知識の社会領域の中でも特に「ESD」をテーマとした教育実践について,真正性という観点からその改善について考察する。本校ではスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け,「持続可能な社会を先導する科学者の育成」を目標としたカリキュラム開発に取り組んでおり,筆者は「ESD」分野の開発を行っている。そこでESD の重要概念である「持続可能な開発」について考察した論文を読解し,プログラムや単元をより「真正な実践」に近づけるよう開発することを目的とした。
対象とする論文は,「韓国の干潟開発論争地の『その後』にみる『持続可能な開発』」(淺野ほか,2011)である。この論文は,韓国における沿岸域の開発に関する共同研究の1 つであり,「持続可能な開発」概念を批判的に検討したものである。まず第1段階として,論文の構成と構造を分析した。次に第2段階として,その論文を活用した教育実践事例を示し,論文の活用について示した。
分析の結果,論文から,「持続可能な開発」概念が社会的に構築されたものである,という学びを読み解くことができた。そして,地理学者の学びをプログラムや単元の構成原理として活用することができた。