学校現場で実施されるテストは,主に学習成果の評価を目的として使用されているが,テストを受けることそれ自体が,学習や長期的な記憶保持を促進することが知られている。また,近年,テストの解答が誤りであっても,後の評価テストの成績が向上することが明らかになってきている(プレテスト効果)。プレテスト効果を効果的な授業方法の開発につなげるためには,学習者の個人特性の影響を考慮する必要があるが,プレテスト効果による記憶促進が学習者の特性によって異なるかどうかについては,現在まで検討されていない。そこで本研究では,単語の対連合学習を用いた従来の研究方法を踏襲し,日本語の刺激を用いてプレテスト効果が出現するかどうかを確認した(実験1)。さらに,学習者の個人特性としてワーキングメモリ容量を測定し,その個人差がプレテスト効果に与える影響について検討した(実験2)。2つの実験の結果,テストを経験した群はそうでない群より評価テストの成績が高く,先行研究同様のプレテスト効果が確認された。しかし,プレテスト効果とワーキングメモリ容量の関連はなかった。このことから,プレテスト効果はワーキングメモリ容量の大小に依存しない現象である可能性が示された。