政府は、地方創生の一環として2015年4月からRESAS地域経済分析システムをインターネットで公開している。このうち基幹的分析メニューである地域経済循環マップについては、民間部門の経済活動に重点を置いていること、属地ベースと属人ベースに分けて生産・分配・支出という三面から所得の流れを分析していること、所得移転の問題を考慮していること、財貨・サービス移出重視から経済循環重視にシフトしていること、独自に作成した産業連関表等を用いて都道府県別だけでなく市区町村別にデータを整備していることなどは大いに評価される。
ところが同マップについては、付加価値の流れとお金の流れを区分していないためお金の流れの全体像をつかめないこと、地域経済循環率の概念は財貨・サービス収支重視の考えと同工異曲とみられること、地域経済循環率は経済活動の帰結であり、地域経済循環率が上昇しても人口1人あたり所得が増大するわけではないことといった問題点が指摘される。同マップの難点は、地域にはお金がないという前提で「稼ぐ力」を強調しすぎていることである。たとえば鳥取県の場合(2015年度)、財貨・サービスの移出入(純)はマイナス4,391億円であり、「稼ぐ力」を欠くようにみえるが、経常県外収支は111億円であり、さらに県外に対する債権の変動が478億円ある。本来の域際収支からみれば、いわゆる低所得地域にも実際にはお金はある。むしろ問題なのは、政府部門の活動が民間部門の経済活動を阻害しているとみられることに加え、お金を「使う力」が弱いことだと考えられる。