本研究は、まず、高等学校公民科「現代社会」において学習する「経済」の内容について、教科書や高校生向けの用語集、大学入試センター試験における出題設問数、他教科との関連から点検した。また、高校生向けの用語集ならびにセンター試験出題設問数と教科書掲載語句数の相関についても明らかにした。その結果、教科書掲載語句数と用語集掲載語句数ならびに用語集掲載語句数とセンター試験出題設問数については、有意な正の相関が見られたものの、教科書掲載語句数とセンター試験出題設問数については、有意差が認められなかった。
そのうえで、「実社会・実生活」との間にどのような乖離(偏り)が生じているかについて、分野を限定し、入手可能な客観的資料を用いて可能な限りの検討を行った。その結果、公民科での学習は、あくまで基本的な法律や権利・義務といった事柄に留まっている部分が見られたり、取り扱っている分野に偏りがあったりする傾向が明らかとなった。さらに、その乖離(偏り)が生じる要因として、教員養成、タイムラグ、「経済」を扱うことの難しさの3点から検討した。