少子高齢化の進展などから、近年保育・幼児教育への関心が高まりをみせている。端緒となったのは、量的な解決を迫られた保育所待機児童問題だが、現在ではその内容を問う質的問題へと論点は移りつつある。しかし、これまでのところ保育・教育の質に関するデータは、ほとんど蓄積されていない。本稿では、2013年9月、東広島市と札幌市の保育所、幼稚園を対象とし、保育・幼児教育の質と子どもの発達との関連について包括的な調査をおこなった資料をもとに、基礎的事項を概観する。施設長調査からは、保育士と幼稚園教諭との間に、学歴、勤務年数、経験年数など人的資本要因で違いがあることや、どちらも賃金カーブの傾きが小さく、保育者の間に就業継続のモチベーションが失われている可能性があることなどが明らかになった。保護者調査からは、保育士や幼稚園教諭のスキルや知識、子どもへの接し方には満足していない一方で、保育料への支払い意志額は低いことなど、保護者の行動に矛盾があることが示された。