本稿では新たに男女別・年齢別の転出者数と転入者数が地域間で整合し、地域間移動を経済格差や移動動態で説明した人口モデルを開発することで、2050年までの中国地域の長期人口予測を行った。年齢別の転出率を考慮したモデルからは、今後進展する少子高齢化により人口変動において社会増減が縮小し、自然減が支配的になることが示された。さらに、高度成長期に人口が多く流入した広島県では今後20年間で高齢者数が24%も増加するとともに、自然減の規模が徐々に拡大していくことが示された。また、2005~2010年の転入超過率を一定と仮定したモデルを採用している他機関の推計と比較すると、他機関の推計が悲観的な予測値であることが明らかとなった。さらに、出生率の変動は各地域の2050年時点の人口に対して1割ほどの規模で影響を与えることがわかった。