我が国の地方税に係る標準税率の経済的メリットは、必ずしも明確でない。そうしたなか、この問題を巡る代表的な先行研究である矢吹(2004)の理論モデルから導き出される結論と、1950年代中頃には地方税率を標準税率未満に設定する市町村が全国各地に存在したという事実に着目し、その後の各地方自治体による標準税率以上への税率引き上げが当該地域経済の技術的効率性を高める要因になっていたのか否かを、確率的フロンティア分析の手法を通じて確認した。推定の結果、矢吹(2004)で指摘されているように、標準税率には地域経済の技術的効率性向上に向けた自治体の行政努力を高める効果があったことが明らかになった。したがって、我が国で課税自主権拡大の観点から現行の標準税率を撤廃することの是非について考えるに当たっては、標準税率の政治的・経済的なデメリットに加え、その経済的メリットにも目配りすべきであると考えられる。