本稿では、農産物に安全と信頼を求める消費者ニーズへの対応と自然生態系の保全とを目的に耕畜連携型「エコ農業」に取り組む事例を調査検討し、そのような農業が成立するための課題を以下のように提示した:(1) 地域的な特徴を活かした連携方法や販売事業に関するアイディアの創案、農家や住民の説得、社会的な合意形成等に着手するリーダーが存在すること。(2) そのリーダーによって、農法転換に向けて農家や住民を組織するためのスキームが策定され、実行されること。(3) 耕畜両部門の農法と販売事業を管理するためのスキームが策定され、実行されること。
本稿では、上記の課題を克服している事例を、社会起業家による「選択的誘因」ビジネス・スキームの実行を通じた公共財供給モデルとして定式化する。