水源林の保全に充てることを目的として、基金を設立する地方自治体が増加している。本研究では、代表的な事例である愛知県豊田市が考案した積立金の調達方式と、基金の現状を調査したうえで、「社会起業家の非営利ビジネスモデル」の視点から当基金の問題点を指摘し、以下のような仮説を提示した。自治体の行政当局が森林保全事業よりも基金の積立そのものを優先している理由は、水源林の保全に対する選好が弱く、管理労働が効率的でないためである。また、水源基金は予算規模拡大の一つの手段として利用されつつある。本稿では、「社会起業家のエコ商品スキームによる公共財供給モデル」の理論的枠組みに基づき、上記の仮説を論証した。